目次
アメリカでは、トランス脂肪酸が全面使用禁止に
2015/6/16 アメリカの米食品医薬品局(FDAは、2018年までに遂にトランス脂肪を全面排除するという決定をしました。
以前より心筋梗塞の原因とされてきたトランス脂肪酸が、ようやく全面使用禁止になります。
でもこれは、アメリカの話です。
また、デンマーク、スイス、オーストリアででも、100g当たり2g以上のトランス脂肪酸を含んだ油脂の国内流通を禁止しており、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、中国な、韓国どでは、食品含有量表示を義務付けています。
日本では全くといっていいほど規制がなく、含有量の表示義務もありません。
これはなぜでしょうか?
日本の内閣府の食品安全委員会や消費者庁、厚生労働省、農林水産省などは、そういった事実はあるものの静観しています。
日本の見解としては、「日本の通常の食事では健康を害するほどトランス脂肪酸を摂っていない」というものです。
もちろん、アメリカの食文化の中では、パンや揚げ物が多いことから、日本よりも摂取量が多いというのは事実です。
アメリカでにおける病気の原因となる食生活によって、肥満や心筋梗塞が増えていることから、規制をかけざるをえない状態であるということなのでしょう。
しかし日本の食文化もかなり変わってきており、家や外食、スーパーやコンビニでも、揚げ物やパンが増え、ファーストフードではパンに揚げ物が挟まって揚げたポテトがついてくるのが現状です。
こうした偏った生活は、トランス脂肪酸はもちろん、塩分や糖分などを含めた他の面でもあまりよくありません。
トランス脂肪酸はなぜいけないのか?
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸と呼ばれる脂質の一種です。
不飽和脂肪酸が身体に良いか悪いか?
これがとても厄介で、良いものと悪いものが混在しています。
オリーブオイルなどに含まれるオレイン酸などで、動脈硬化の原因となる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らし、動脈硬化の防止に役立つ善玉コレステロール(HDLコレステロール)は減らさないという性質があります。
また、魚の油に多く含まれているIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)で、えごま油やなたね油などに含まれるα-リノレン酸もこの仲間で、動脈硬化予防の働きもあります。
他に、大豆油やコーン油など、一般的な植物油に多く含まれるリノール酸は悪玉コレステロールを減らしますが、摂りすぎると悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも減少させてしまいます。また摂りすぎは肥満につながるうえ、過酸化脂質や血栓(血のかたまり)を増やして動脈硬化を進行させたり、アレルギー症状を起こす物質の合成を増やして症状を悪化させたりするといわれています。
トランス脂肪酸はリノール酸と同じような作用をし、摂りすぎると悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも減少させてしまいます。
このことにより、心臓疾患のリスクを高めるといわれ、心筋梗塞や狭心症、妊娠中の胎児への影響も懸念されています。
でも、大量に摂った場合に可能性があるということなので、食べるとそうなるわけではありません。
トランス脂肪酸はどのようにできるのか。
天然の油脂にもトランス脂肪酸が入っていないわけではありませんが、問題となるほど多く含まれていません。
ではいつ、トランス脂肪酸が生まれるのでしょうか?
2つ原因があります。
油脂を固める時に水素を使ってトランス脂肪酸が発生する
こうした液体状の油では少ないトランス脂肪酸も、いろいろな食品へ加工する際に、その油を固めるということが必要になります。
その固める技術の1つに水素を添加させる方法があり、その油を個体化させる課程においてトランス脂肪酸が作られてしまうのです。
油脂を精製するときに出る臭いを消す処理でトランス脂肪酸が発生する
植物から油を絞るときに独特の臭いが発生します。
この臭いは加工食品として流通させるためには不都合であるため、この臭いを取り除くために高温処理を行います。このとき、植物に含まれている(シス型:自然由来の型)の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸ができます。
様々な油脂から臭いを取り除く高温処理をすれば、ほとんどの油脂でトランス脂肪酸が増えてしまうのです。
トランス脂肪酸を多く含む食品
トランス脂肪酸を多く含む食品として、加工前の油脂の状態と、加工後の食品とにわかれます。
植物性の油脂を固体にしたものといえば・・・
固体になった油脂を想像してみてください。
代表的なものは、バターかマーガリンですよね。
バターは動物性の油脂なので固体化が容易ですが、マーガリンのほとんどは植物性なので固体化するのに高温処理が必要になります。
ですから、マーガリンには大量のトランス脂肪酸が入っているということになります。
また、ファットスプレッドやショートニングも同じように自然由来の油脂を加工して作られていますので、トランス脂肪酸が多く入っています。
マーガリン、ショートニングなどを使った食品
マーガリン、ショートニングなどを使った食品というと、どんなものを想像しますか?
以下に挙げるものの全てに入っているわけではありませんが、キャリーオーバー(加工後の食品のみを記載すれば良く、その食品の原材料を表示しなくて良い仕組み)で入ってくる可能性もあります。
フワフワのサクサクのパン
市販されているパンの原材料をみると、ほぼ全てといっていいほどのパンにはマーガリンかショートニングが含まれています。
パンを作ったことがある人であれば、バターやマーガリンを多く入れる工程を想像できると思います。
では、市販のパンはバターではなくマーガリンが使われるのはなぜでしょうか?
理由1:バターは独特の動物性油脂の臭いがありますが、マーガリンは臭いを消す処理がされているため。
理由2:バターよりマーガリンのほうがカロリーは低いため、マーガリンを使います。
理由3:バターよりマーガリンのほうが安いため、マーガリンを使います。
ですから、ホームベーカリーでは原則バターを使いますよね。
また、マーガリンを大量に使うとフワフワのパンになります。
たとえばクロワッサン。大量のマーガリンを使うので、フワフワのサクサクに仕上がります。
こういった、フワフワのサクサクにはマーガリン=トランス脂肪酸がたっぷり入っていると思って間違いないでしょう。
パンにマーガリンをたっぷり塗って食べる、というのはかなり危険ですね。
そのほか、ピーナッツバターなども疑った方が良いでしょう。
また、パンに入っているわけですから、パン粉にも入っています。
市販のパン粉には、ショートニングの表示がないものは、ほとんどありません。
ですから、揚げ物のほぼ全てにはトランス脂肪酸が入っているといっても過言ではありません。
パン粉は揚げ物以外にも、つなぎなどで様々なレシピで使われます。
パン粉を大量に使うことは少ないでしょうが、必ず入っているということは覚えておきましょう。
お菓子など
ケーキやクッキー、市販のスナック菓子にもマーガリンやショートニングは多く使われています。
クラッカー類などのサクサク系のもののほとんどはほとんど入っていると過言ではありません。
企業も競争ですから、子どものお菓子は売れないといけませんので、子どもの健康は二の次です。
アメリカでは、大人たちがこうしたスナックを食べる文化から肥満が増え、トランス脂肪酸を禁止せざるをえないところまできたのでしょう。
そのほか、アイスクリーム、チョコレート、クラッカー、ポテトチップスなど、揚げたりサクサクだったりちょっと油の固形に近いものは可能性があります。
揚げ物
トランス脂肪酸の入った揚げ物の代表格は、フライドポテトとドーナッツではないでしょうか。
一時期、マクドナルドのマックフライポテトやハンバーガーが腐らないということが話題に上がっていましたね。
それがトランス脂肪酸のおかげなのかわかりませんが、大変怖いことです。
でも消費者は簡単に腐ってもらっても困るので、消費期限の長いものを求め、その結果が現在なのかもしれません。
日本でも、お店の中で揚げるものなどで、トランス脂肪酸を使わないなどの自主規制をしているところが多くあります。
セブンイレブンやイトーヨーカドー、ミスドでもそうした取り組みをしていると聞きます。
パン粉も揚げ油も含めて、摂る総量を減らしていくことが必要ですね。
その他
そのほか、インスタントラーメン、カップ麺、缶に入った状態で売られているスープ、シチューやカレーのルウなど、油と関係するところには可能性があります。
また、冷凍食品などで揚げられた状態で売られていて電子レンジで温めるだけでものも、すでにトランス脂肪酸入りの油で揚げられている可能性も高いです。
トランス脂肪酸を摂らない生活
昔、花王の「エコナ」という商品がありました。
健康・ヘルシーと謳い一時期とても人気がありましたが、発がん性物質が含まれていたり、トランス脂肪酸が大量に含まれていたりなどで発売中止に追い込まれています。
低価格大量生産を行っている企業が、エコやヘルシーを前面に出した時には少し疑った方が良いでしょう。
低価格には理由があり、大量生産にはリスクがつきものです。
私達は、賞味期限の異常に長い、コンビニの店頭にある食品に疑問を持たなくなってきました。
トランス脂肪酸は、その昔にはほとんどなかったといえます。
臭いを消し、コストダウンをする人工的な過程でトランス脂肪酸が発生しました。
私達が、いつでもどこでも手軽に手に入る美味しい食べ物を求めることが一番の原因でしょう。
ですからまず、自らの手でこうしたマーガリンを使わなければならないような食べ物を作ってみると良いでしょう。
そして、その量やバターで代用できることを知れば、マーガリンやそれを使った手軽な食べ物への疑念が湧くはずです。
マーガリンがなくとも、人工的なトランス脂肪酸がなくとも、生活は困りません。
そして多少摂ってもなんら健康への害がないとされています。
トランス脂肪酸は、自然の中にも存在するものですから、トランス脂肪酸を摂ってはならないという過剰な拒否反応をする必要もありません。
発がん性物質が発見されたわけではないので。。。
現在の食生活を見直して、マーガリンやショートニングを大量に摂っているかどうかはチェックが必要です。
私は、自宅でホームベーカリーでパンを焼き、マーガリンではなくバターを買い、お菓子類を毎日食べることはありません。
外食でパンを食べたとしても週に1~2回程度で、ファーストフードは1年に数回も行きません。
ですから、トランス脂肪酸がいくら悪いといっても、私の生活にはほとんど入ってきませんし、過剰に摂り続けるようなことはありません。
今後は少しでもNGという結果が出るかもしれませんが、ほとんどのこうした規制は、トータルの量をコントロールしたり、過剰に摂ることを制限させるためのものといってもいいでしょう。
少なくとも私の生活では、パン粉にショートニングが入っているからといって買わないという選択はないように思います。